秋もたけなわ。
木枯らしに身をすぼめ、早まる日暮れに家路を急ぐこの時期は、暖かいお家でのリラックスタイムが何よりもホッとできる瞬間です。
読書に励んだり、音楽に親しんだりと充実の余暇が過ごせ、リフレッシュのおやつには柿やぶどう、梨といった旬のフルーツで、食欲の秋も堪能できます。
四六時中食べることが頭から離れない食欲の秋にちなみ、音楽でも食べ物に関する楽曲があるのか探してみたくなります。
食べ物をテーマにした洋楽なら真っ先に思い浮かぶのが、ビートルズのSavoy Truffle。
1968年にリリースされたアルバム「The Beatles」の収録曲です。
生チョコレートにコーティングを加えたTruffle(トリュフ)は、ソフトな口あたりと上品な姿形で、贈答用のボックスチョコレートに含まれることの多い一品。
“Savoy Truffle”も例外ではなく、当時イギリスで販売されていた“Good News”と言うチョコレートの詰め合わせに入っていたひし形の一口サイズのトリュフチョコレートなのです。
冒頭の歌詞に出てくる、Creme Tangerine(クリーム・タンジェリン)、Montelimar(モンテリマ)、Ginger Sling(ジンジャー・スリング)、Coffee Dessert(コーヒー・デザート)といった名前は、詰め合わせのボックスに並んだ美味しいチョコレートの数々。
甘いモノに目がなく虫歯だらけの同業の友人、エリック・クラプトンを茶化した一曲として知られますが、チョコレートを頬張りたい誘惑に駆られます。
他にも、食べ物にちなんだ洋楽と言えば、レッド・ツェッペリンのCustard Pie(カスタード・パイ)、ジェフ・ベック・グループのIce Cream Cakes(アイスクリームケーキ)と味わいのある楽曲が目白押しです。
スウィートなガールフレンドを、甘さたっぷりのパイやアイスクリームに例えた大人向けの歌詞が印象的ですが、現実には食欲が勝ってしまうかも。
また、ヘルシーフードもなんのその、ジャンクフード愛を軽快なサウンドで歌うジミー・バフェットのCheeseburger in Paradaise(チーズバーガー・イン・パラダイス)も、思わずお腹が鳴ってしまいそうなナンバーです。
アメリカで同名のレストランを展開するバフェットだけに、ジューシーなパテに、オニオンスライスやレタスをトッピングして、フレンチフライにピクルスのサイドと一緒に、冷たいビールで流し込む・・と説得力満点の歌詞で、よだれがとまりません。
モダンミュージックでは、元ワンダイレクションメンバーでソロ活動中のハリー・スタイルズのWatermelon Suger(ウォーターメロン・シュガー)、ラナ・デル・レイのCherry(チェリー)などが、果物を通してノスタルジックな思い出や難しい恋人との関係を、しっとりと表現していて、聴き入ってしまいます。
他にもたくさんの食べ物が出てくる曲があるので、秋の夜長にお気に入りを探してみてください!
野菜がタイトルについている曲はなにがある?SMAPのセロリと!?
秋は果物だけでなく、さつまいもやかぼちゃ、きのこ類など旬を迎える野菜も豊富です。
食欲の秋に収穫の秋つながりで、野菜がタイトルにつく歌謡曲もピックアップしてみましょう。
例えば、国民的アイドルグループであったSMAPのセロリ。
シンガーソングライターである山崎まさよしのオリジナル楽曲をカバーした、ほんわかと心温まる名曲です。
野菜の中でも好みが分かれやすいセロリに、好き嫌いが違っても惹かれあってしまう大切な人への想いがヒシヒシと感じられ、セロリにも愛着が湧いてきます。
セロリと同様、好き嫌いが分かれやすい野菜と言えば、ニンジン。
しかし、人参が苦手な人でも笑顔で口ずさんでしまう、明るくリズミカルなサビで有名な曲と言えば、田原俊彦の1982年のヒット「NINJIN(にんじん)娘」。
好きな女の子を人参に置き換え、どんどん魅力的になる様を元気いっぱいに歌っています。
子供向け番組の「開け!ポンキッキ」の今月の歌に起用され、人参の頭文字である“に”と、数字の“2”の韻を踏んだ、“1本でもニンジン、ニーンジン、2本でニンジン、ニーンジン”のキャッチーなフレーズで、子供から大人まで幅広く受け入れられました。
一方で、同じ人参でも、全く様相が異なるもう1つの楽曲が、アコースティック・デュオとしてカリスマ的人気を誇るゆずによる「ニンジン」です。
2006年に発売されたアルバム「リボン」に収録されたニンジンは、馬を早く走らせる為に好物のにんじんを鼻先にぶら下げるたとえにちなんだ人生の教訓を説いています。
野菜の中では、ニンジンと並んで活用度の高い玉ねぎ。
お味噌汁や炒め物に入れると甘みが出て美味しく、キッチンの常備野菜として欠かせません。
玉ねぎをモチーフにした曲も多くあり、奇抜な外見とメッセージ性の強い楽曲で人気を集めたバンド、爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で~はるかなる思い」(1989年)は、切なさにホロリとさせられる感動ソング。
ここで使われた玉ねぎは、実はミュージシャンにとってコンサートの聖地とも言える日本武道館の屋根に配置された“擬宝珠”を意味します。
黄金のどっしりとした形は確かに玉ねぎそのものです。
文通相手を武道館でのライブに招待したけれど、彼女は結局現れず、夕陽や夕闇に輝く大きな玉ねぎを力なく見つめたというストーリーで、サブタイトルの“はるかなる思い”に込められた複雑な胸中にジーンときます。
1986年発売の斉藤由貴の「土曜日のたまねぎ」も、来ない恋人に作ったポトフに浮かぶ玉ねぎが悲しげなラブソング。
切ると涙を誘う玉ねぎは、歌も何故だか物憂げです。
ご飯系の歌なら、「おべんとうばこのうた」?「カレーの歌」?!
スイーツに野菜と来たら、続いて知りたくなるのは、主食を題材にした歌ではないでしょうか。
日本人にとっては一番人気のお米。
つややかでホカホカの炊きたてご飯は、ほんのりと甘みがあって無敵の美味しさです。
ご飯系の歌なら、昔から長らく親しまれてきた定番ソング「おべんとうばこのうた」の右に出るものはありません。
“これっくらいの、おべんとばこに、おにぎり おにぎり ちょいとつめて・・・”の歌い出しでおなじみのリズミカルな童謡は、児童文学作家であり「げんこつやまのたぬきさん」なども手掛けた香山美子さんの作詞により、1978年に誕生しました。
この曲の楽しさは、おべんとうばこのサイズを指で描き、おにぎりを握るジェスチャーを交えながら歌える点で、手遊び教材として保育園や幼稚園で定番の人気童謡です。
アリさんには極小のお弁当箱を、象さんにはでっかいお弁当箱というアレンジが利くのも、子供心をくすぐります。
刻みしょうがにごま塩、レンコンやフキと、なかなか渋いお弁当の中身にも注目ですが、にんじんさん=2、さくらんぼさん=3、しいたけさん=4、ごぼうさん=5と、頭文字との韻で、何気に数字の勉強にもなっているという優れもの。
近年はお米に代わりパンの消費量が増えつつあり、そんな時世を反映してか、「おべんとうばこのうた」のおにぎりがサンドイッチになったバージョンも加わっています。
また、ご飯との相性もバッチリな愛される国民食、カレーの歌も様々なバージョンがあります。
NHKの「おかあさんといっしょ」から、“カレーライスはからい、とってーも からいな~”とカレーの辛さを優しくリマインドしてくれる「カレーライスのうた」がまず1曲。
同名タイトルの童謡でありながら、手遊び付きでカレーライスの材料や作り方を歌うもう1つの「カレーライスのうた」は、どちらかと言えば「おべんとうばこのうた」のスタイルを継承した正統派です。
大人向けには、京都で結成されたバンドのくるりによる切ないバラード「カレーの歌」がおススメです。
香ばしいかおりに、ピリッと辛くもジワリと甘くもあるコクの深さが魅力のカレーに、別れた彼女へ募る思いをブレンドしています。
さらに、米米CLUB「KOME KOME WAR 」(1988年)、森高千里「ロックン・オムレツ」(1994年)、SKE48 「青春カレーライス」(2014年)で、すっかり気分は満腹です。
まとめ
冬も間近の秋の余暇には、色々なアクティビティでリフレッシュ。
カルチャーとグルメの融合として、食べ物をモチーフにした音楽を味わって、お腹も気持ちも満たされてみませんか。
洋楽なら、ビートルズのSavoy Truffleでチョコレートの数々を堪能し、カスタードパイにチーズバーガー、スイカやさくらんぼまで、色々な食べ物を歌った楽曲が楽しめます。
対照的に邦楽では、野菜を取り上げた歌の数々に注目です。
SMAPのセロリや田原俊彦のNINJIN娘、爆風スランプの大きな玉ねぎの下で、など野菜の素朴さに込められた人間模様に心動かされます。
お腹が空いたらやっぱりご飯、そんな時にはおべんとうばこのうたや、カレーライスのうた、カレーの歌がぴったりです。
バラエティ豊かな歌謡曲を通して、お腹と心のバーチャルな満腹感が味わえます。