読書の秋って何月?「秋」と同じで9月から11月?秋の読書週間?!

読書の秋 何月

深まる秋の夜長は、静寂に身を委ねて、読書に没頭できる絶好の機会。

ずっと気になっていた長編小説から、自伝的エッセイやビジネスハウツー本まで、思い思いの1冊を手に取ってじっくりと読み進めてみたいものです。

暑さもひと段落する秋は活動的に過ごせる季節で、「読書の秋」に限らず「芸術の秋」に「スポーツの秋」そして「食欲の秋」と様々なアクティビティと関連付けて表現されてきました。

そもそも、「読書」と「秋」が結びつく所以(ゆえん)はどこにあるのでしょうか。

暦の上では8月8日頃に立秋を迎え、早くも秋の気配が感じ取れますが、気候の実質的な変化に気付くのは、9月23日前後にある秋分の日。

秋分の日を境に、段々と日の入りが早くなり、日照時間が減って闇に包まれる時間が長くなります。

そんな秋の夜長に着目したのが、古代中国の詩人である韓愈(かんゆ)であり、「符読書城南」の一節で、秋を迎えて降り続いた雨がやみ、涼しさを感じつつ灯した明かりの下で書物を広げると、表現しました。

つまり、長い秋の夜は過ごしやすい気候で、心身共に落ち着ける時間が確保でき、読み物に集中するには最適な時期であると位置付け、これが読書の秋の原点とされています。

また、夏目漱石が1908年に発表した長編小説「三四郎」の中で、韓愈の一節を引用したことからも、秋の夜長は本を読んで過ごすというイメージが日本でも広く浸透しました。

夜長に読書という習慣は、夜の時間が長くなる9月から11月の秋シーズン全般にふさわしく、秋と言えば読書という概念が定着するに至ります。

さらに、読書の秋を後押ししたのが、読書推進キャンペーンの一環として毎年恒例となっている読書週間の存在です。

74回目を迎える2020年度の秋の読書週間は、「ラストページまで駆け抜けて」の標語を掲げ、10月27日~11月9日までの2週間に渡り開催されます。

読書週間を主催する読書推進運動協議会によれば、アメリカのチルドレンズ・ブック・ウィークが11月に実施されていたのに習い、同じ時期に日本でも読書週間を設けたとのこと。

以来、文字・活字文化の日に制定された10月27日からの2週間を、固定の読書週間と定めています。

期間中には、芸術の振興を担う文化の日(11月3日)も含まれるので、相乗効果も抜群です。

読書週間に合わせて、書店や図書館ではおススメのブックリストが公開されるので、お気に入り1冊を是非見つけてみましょう。

秋の小説での表現にはどんなものがある?物書きならこう表現する!?

秋 小説 表現

落ち着いた気候に頭脳も冴え渡り、いつもより深く文化や芸術に触れることのできる秋。

小説家にとっても、琴線に触れる秋の美しさを所々に散りばめてストーリーを執筆するのは、この上ない喜びかもしれません。

秋の情景を連想させる表現手法には、風景や天候、秋特有の植物や食べ物、生き物といったキーワード、すなわち季語を用いた描写が効果的です。

例えば、澄み渡る青空・雲一つない高い空・いわし雲などは秋空のイメージをダイレクトに伝え、木枯らし・初霜といった気象事項や、十五夜・彼岸など秋の行事からのアプローチもできます。

さらに、紅葉・銀杏・稲穂・柿・ススキ等、実りや収穫を思い起こす秋の季語や、とんぼ・鈴虫・コオロギといった秋ならではの生き物に季節を託すことも可能です。

具体的な手法を学ぶなら、やはり物書きのプロである作家による秋の描写の実例を見るのが一番です。

まずは、明治の文豪の1人として名を馳せた永井荷風による1909年の小説「すみだ川」の一文から。

「初秋の黄昏は幕の下りるように早く夜に変った」と、気付かぬうちに日の入りが早くなっていく秋の夕暮れ時を上手く例えています。

永井荷風と同時期に活動し、日本の近代文学の第一人者と言える夏目漱石も、1911年刊行の小説「門」のなかで、「秋日和と名のつくほどの上天気」と、カラッと晴れ渡った秋のさわやかな天気をストレートに表現。

さらに、ベストセラーとなった自伝的小説の「放浪記」(1928年連載開始)で知られる昭和初期の女流作家の林芙美子は、同小説にて「秋刀魚(さんま)を焼く匂いは季節の呼び声だ」と、生活感あふれる秋の情景を微笑ましく書き留めました。

もちろん、現代小説にも秋の描写は脈々と受け継がれています。

「白い巨塔」や「華麗なる一族」で知られる山崎豊子も、1999年の大作「沈まぬ太陽」で「高く澄みきった空に、鱗雲が浮かび、秋風がたつ季節になった」と秋の季語である鱗雲を効かせて、秋晴れの広々とした空を称えています。

そして、1987年発表の「ノルウェイの森」の大ヒットにより、世界中で多大な人気を誇る村上春樹。

1980年にリリースした小説「1973年のピンボール」の一節で、「何もかもがすきとおってしまいそうなほどの十一月の静かな日曜日」と、秋の静寂さを彼流の独特な視点で描いています。

著名な作家による季節の描写は、文章としての美しさはもちろんのこと、秋の風景を直感的に思い浮かべることができ、感嘆せずにはいられない魅力があります。

読書の秋なのに若者は活字離れ?デジタルで楽しくて仕方なくなる!?

読書の秋 若者 離れ

秋と言えば読書というイメージが定着しているにも関わらず、近年は活字離れの指摘が顕著になりつつあります。

特に若い世代にとってはインターネットの台頭により、情報収集やコミュニケーションの方法は一新され、動画鑑賞やゲームなど余暇の過ごし方も様変わりしました。

かつては、図書館や書店で探求心を満たす書籍を手に入れることが、想像力や知識を深めるための第一歩でした。

今ではコンピューターやスマートフォンで検索するだけで、全てが解決できる便利な世の中になっています。

実際の所、若者の活字離れがどの程度進んでいるのか、データを元に検証してみましょう。

全国の16歳以上の男女を対象に、文化庁が2019年に実施した「国語に関する世論調査」によれば、全体の約半数を占める47.3%が1ヶ月に1冊も本を読まないと答えています。

同時に、全体の7割近くである67.3%が読書量が減っていると明言し、前回調査の数値を超える結果になりました。

その理由としては、日々の忙しい学業や仕事の合間を縫って、ネットサーフィンやSNS、動画の視聴、ゲーム等、スマホやコンピューターに費やす時間が増え、読書をする暇がないためと考えられます。

しかし、これは若者に限った事ではなく、幅広い年齢層で起こっている現象です。

また、読書、すなわち印字された本を手に取って読む行為が減っているとは言え、スクリーンを目で追っている先には多くの活字があり、全く読んでいないわけでもありません。

物理的な読書というスタイルではないものの、スマホやコンピューターで読み込む情報の量は爆発的に増えています。

文化庁の世論調査では、電子書籍の利用の有無も問いかけており、「よく利用する」と「たまに利用する」の割合は合計25.2%と過去最高をマークし、4人に1人は電子書籍を活用していることが明らかになりました。

約6割が読書量を増やしたいと回答しているのを鑑みれば、今後はスマホのアプリやインターネットを活用した電子書籍で読書を楽しむというスタイルが主流になるかもしれません。

最新のガジェットを使ったバーチャルな読書にも、紙のページを1枚ずつめくる正統派の読書にも、それぞれに良さがあり、違った楽しみ方ができます。

まとめ

快適な気候に背中を押され、活動的になる秋。

芸術の秋やスポーツの秋と並んで、読書の秋もすっかり定着しました。

夜が長くなる9月から11月にかけての秋全般に読書が適し、10月27日から2週間に渡り開催される秋の読書週間により、読書への意欲に拍車がかかります。

美しい秋の情景に魅了される作家も多く、小説や随筆を通して印象深い秋の描写の数々が堪能できます。

読書の秋に影を落とす若者の活字離れが指摘されますが、読書スタイルの変化を受け止め、電子書籍の更なる普及により、新たな読書の楽しさが拡大するかもしれません。