秋の季語は桃の実、毛桃、白桃、水蜜桃、天津桃など。花は春の季語!

秋の季語 桃

俳句を創作する際に最も頭を悩ませるのが、季語の選定ではないでしょうか。

季語は、気候・行事・動植物・食物など9項目に分類され、その数は何と5000個以上。

次々と増え続ける季語のアイデアを得るなら、集大成とも言える「歳時記」が強い味方になります。

多くの作物が実り、果実が熟す秋は、植物を題材にした季語には事欠かず、親しみのある俳句が作りやすい季節です。

秋の季語として柿や梨ではワンパターンすぎて目新しさに欠けると感じるなら、色々な呼称があり創作の幅を広げることができる「桃」がおススメです。

桃は、産地や品種により秋に収穫されることもしばしばで、種類も実に多様。

もともと俳句の世界では「桃の花」への着目が主流でしたが、香りが高く甘みたっぷりのジューシーな「桃の実」も秋の季語として定着しています。

中国が原産である「桃の実」に対し、日本種である「毛桃(けもも)」は産毛に覆われた小さく固めの桃を指し、ひねりの利いた秋の季語として最適です。

さらに「白桃(はくとう)」も季語としては秋に分類されます。

岡山県が原産で、熟しても白いままの外見と強い甘みが特徴の高級な桃です。

中国にルーツを持つ「水蜜桃(すいみつとう)」は、水分をたっぷりと含み蜜のような甘さであることから名付けられ、白やピンク、黄色の果肉を含めた一般的な桃の事で、秋の趣ある季語として使えます。

昔ながらのとんがりシェイプ、固くて甘みの少ない「天津桃(てんしんもも)」は、ジャムなどの加工品向けで、これまた秋の季語に含まれます。

季語の面白さは、同じ果物であっても果実と花では、暗示する季節が異なる点です。

桃の場合も例外ではなく、ひな祭りでもお馴染みの「桃の花」は、春の季語になります。

また、桃に良く似た小ぶりの李(すもも)や米桃(よねもも)は夏の季語で、些細な季節の移り変わりを託された季語の奥深さに魅了させられます。

秋の季語でトマトは間違い。晩夏の季語で、ほかにはナスなども!

秋の季語 トマト

秋は実りの季節だからこそ、作物にちなんだ季語がピッタリです。

秋ならではの収穫物と言えば松茸や栗などが思い浮かびますが、もっと身近な野菜でも秋らしさを反映できます。

ただ、季語を野菜にする場合は、一般的なイメージで四季を判断してしまうと、意図した季節とは全く別の時期を詠んでしまうことになるので注意が必要です。

例えば、毎日の食卓に彩りを添えてくれる瑞々しい真っ赤なトマト。

栽培の最盛期は6~8月ですが、実は初夏と秋が一番美味しい旬なので、秋を表す季語に思えます。

しかし厳密に言えば、トマトは夏の終わりを意味する晩夏の季語なので、秋を詠む俳句にはNGです。

トマトと同じナス科の野菜である、ナスも初秋にも美味しく頂けますが、晩夏の季語にあたります。

但し、秋茄子(あきなすび)と時候のナスを示すなら秋の季語です。

その一方で、長ナスや丸ナス等の形の違いを言う場合は、定型のナスにならって夏の季語として使われます。

ピリッとした苦みが美味しいセロリは、日本のセロリ生産の約半数を占める長野県より、夏場から10月にかけて多く出荷されます。

ならば季語も秋かと思いきや、セロリは冬の季語です。

夏に蒔いたセロリの収穫は11~3月の冬場なので、冬野菜にカウントされます。

それでは、秋を表現する野菜の季語には何があるのでしょうか?

南瓜(かぼちゃ)、甘藷(さつまいも)、馬鈴薯(じゃがいも)、玉蜀黍(とうもろこし)、稲などは、全て秋の季語です。

また、銀杏、オリーブの実(花は夏の季語)、唐辛子(花は夏の季語)、オクラ、生姜、ごま、山椒の実、栗、きのこ・松茸(但し、なめこは冬の季語)も秋の季語として活用できます。

秋の季語で果物なら、梨、柿、林檎、葡萄、無花果、檸檬など沢山!

梨狩りやぶどう狩りに栗拾いと、秋の行楽には果実の収穫がつきもの。

バラエティに富んだフルーツの数々を抜きにして、秋の味覚は語れません。

だからこそ俳句でも、秋の季語として古くから果物がしばしば登場しています。

秋を感じさせる果物と言えば、夕焼けに艶やかなオレンジ色が映える柿。

軒先に吊るされた干し柿も、何とも風情のある光景です。

柿は、

「里古(さとふ)りて柿の木持たぬ家もなし」(松尾芭蕉)、

「柿落ちてうたた短かき日となりぬ」(夏目漱石)

など、多くの俳人に好まれた秋の季節感に満ちた季語です。

そして、瑞々しくシャリシャリとした食感と程よい甘みがたまらない梨も、秋を代表する果物であり、秋の季語として適切です。

ちなみにフランス生まれの西洋梨であるラ・フランスであっても、秋の季語である洋梨の一種と見なされるため、俳句に活用できます。

他にも、オーソドックスな秋の季語として、巨峰やデラウェアなど色々な品種が楽しめる葡萄(ぶどう)や秋から冬にかけて旬を迎え、果実狩りでは人気の高い林檎が良い候補です。

りんごに関しては「青林檎」は夏の季語、「冬林檎」はその名の通り冬を示し、絶妙な季節の違いを描写します。

対して「林檎の花」は春の季語となり、季語の趣き深さが感じられます。

また、昨今でも田舎では柿の木とならんで、無花果(イチジク)の木がある家々を見かけます。

たわわに実ったイチジクは晩秋の情景を思い起こさせ、秋に相応しい季語の1つです。

秋の季語としては意外に思える檸檬(れもん)や柚子、すだち、金柑(きんかん)等の柑橘類も、ひと味違った秋の俳句を詠むのに役立ちます。

美味しい秋の果物を季語に見立てて俳句を作るプロセスは、まるで秋の味覚を堪能するかのような楽しさを覚えます。

まとめ

俳句作りの要(かなめ)とも言えるのが、季語の選定。

秋は収穫の時期でもあり、植物や食べ物にちなんだ季語が多く、親しみを感じながら吟味することができます。

様々な趣のある呼称を持つ桃は、秋の季語です。

桃の実や白桃、水蜜桃など、繊細な情景を投影して季節を詠んでみましょう。

また、桃の花は、春を暗示するので注意が必要です。

野菜を秋の季語として活用する場合、トマト・ナス・セロリなどは他の季節を意味するので使えず、南瓜(かぼちゃ)や甘藷(さつまいも)などが代表的です。

秋の味覚を反映してか、柿や梨、葡萄に無花果など、秋の季語である果物は豊富にあり、楽しく選べます。