花祭りの甘茶の作り方は簡単!おいしさのために知っておくべき事!

灌仏会

花まつりと聞くと、お花見や美しい花々を愛でるフラワーショーを思い浮かべがちですが、実は伝統的な春の仏教行事の1つなのです。

毎年4月8日は、お釈迦様の生誕を祝う花まつりの日。

正式には「灌仏会」(かんぶつえ)と呼ばれる法会です。

意外にも、花まつりという呼称が定着したのは、明治時代にドイツに留学していた僧侶達が、灌仏会で甘茶をかける仏像である誕生仏に、花を飾ってお祝いするイベントを現地で開催したのがきっかけ。

ドイツ語でブルーメン・フェイスト(直訳すると花祭り)と呼ばれ、日本ではお花見の時期と重なることもあり、馴染みのある花まつりとして知られるようになりました。

花まつりは、寺院の境内に春の草花を飾り付けた花御堂をこしらえ、甘茶を満たした桶にお釈迦様像を安置して、柄杓(ひしゃく)で甘茶をかける儀式。

仏像に香水をかける行為を「灌仏」と言うことから、儀式は灌仏会と名付けられたのです。

甘茶は仏像にかけるだけでなく、参拝者にも配られ飲用されてきました。

 

花祭り 甘茶 作り方

 

特別な飲み物と感じられる甘茶ですが、自宅でも簡単に美味しく作ることが可能です。

原料は、アジサイ科アジサイの変種であるアマチャという落葉低木で、その若葉を蒸して揉み、乾燥させたものが茶葉となっています。

黄褐色の見ためで、名前の通り甘みのある甜茶(てんちゃ)の一種です。

甘茶の乾燥茶葉を入手したら、急須で蒸らす方式、または、やかんなどで煮出す方法で甘茶を作ります。

急須を使う場合に美味しく淹れるポイントは、茶葉を入れすぎないこと。

沸騰したお湯を注ぎ、お好みに合わせて数十秒から2~3分ほど蒸らしてから頂きましょう。

一度に多めの甘茶を作ることができる煮出し方式では、水1リットルに対して甘茶の葉5gを入れ、4分間煮出して茶葉を取り出すと、味と色合いが抜群の甘茶が完成します。

灌仏会の食べ物で絶対にハズせないのは?恥をかかない食べ物を紹介!

灌仏会 食べ物

花まつりでは、花御堂に置かれた誕生仏に甘茶をかける儀式が執り行われます。

この風習は、お釈迦様の誕生時に、天から現れた竜が甘露(甘みのある液体)を産湯に降らせたという言い伝えによるものです。

甘茶は飲用としてふるまわれますが、他にも灌仏会にちなんだ食べ物はあるのでしょうか?

まず最初に、花まつりで絶対にハズせないのは、精進料理です。

仏教の教えに基づき、肉類を含まず野菜や穀物中心の植物性の食材を使ったメニューには、旬の食材もふんだんに用いられます。

春が旬であり、天に向かって伸びる様が縁起の良いタケノコはまさに代表格で、右手で天を指す誕生仏を彷彿とさせる野菜です。

仏様に見立てた野菜は仏影蔬(ぶつえいそ)と呼ばれ、そら豆やウドもその典型として春の精進料理には欠かせません。

さやが空へ伸びるかのように育つそら豆は、仏豆という別名を持ちます。

また、漢字で独活と書くウドは、生誕直後に天地を指して「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんげ ゆいがどくそん、この世に我ほど尊い存在はないとの意)と発したお釈迦様の伝説を体現するかのように大きく育つ野菜です。

さらに、忘れてはならないのが、仏様にお供えする草餅やよもぎ餅、草団子などの和菓子の数々。

花まつりの時期に野山に茂るヨモギの若芽を摘んで、餅や団子に練り込んだ素朴な和菓子は、香ばしく鮮やかな緑色が目を引く伝統品で、甘茶にもぴったりです。

なんと北陸地方では、お釈迦様の命日(旧暦2月15日)に食される涅槃団子を花まつりにも配る風習が継承されているとか。

お釈迦様の骨を模し米粉で作られる涅槃団子は、地・水・火・風・空を表す5色に着色されています。

生と死を別物と見なさない仏教の考えからすれば、花まつりに提供されてもおかしくはないのかもしれません。

灌仏会にちなんだ俳句とは?絶対に知っておきたい季語はあるのか?

灌仏会 俳句

草木の芽生えと共に桜が満開となるうららかな春は、農作業を開始する時期でもあり、様々な年中行事が受け継がれてきました。

季語を交えて四季を詠む俳句は、とりわけ歳時との結びつきが深く、花まつりにちなんだ作品も数多く創作されています。

例えば、江戸時代を代表する俳諧師の松尾芭蕉は「灌仏や皺手を合はする数珠の音」や「灌仏の日に生れあふ鹿の子かな」と詠みました。(季語:灌仏、季節:晩春)

年配者が皺の多い手に数珠をかけ、灌仏会で一心不乱に拝む姿を表現した前者の俳句は、当初「涅槃会や皺手合する数珠の音」であったと言われます。

芭蕉は、元禄7年(1694年)10月12日に51歳で亡くなりますが、同年に灌仏会を涅槃会(お釈迦様の命日)に再度改めた俳句を発表しており、表裏一体である死生を悟ってのことだったのかもしれません。

また、「灌仏の御指の先や暮の月」「子どもらも頭に浴びる甘茶かな」「雀らがざぶざぶ浴びる甘茶かな」「灌仏やふくら雀も親連れて」は、松尾芭蕉と並び三大俳人として名高い小林一茶による俳句です。
(季語:甘茶・灌仏、季節:晩春)

身近な視点でユーモラスに花まつりを表現した一茶の俳句には親近感を覚えます。

そして、近代俳家として知られる飯田蛇笏も「わらべらに天かがやきて春祭」(季語:春祭、季節:晩春)と明るい春の陽ざしの下、元気いっぱいで稚児行列に参加する子どもを生き生きと描写しました。

晩春を示す灌仏会にちなんだ季語は数多くありますが、覚えておきたい定番は、灌仏会(灌仏)・花まつり・甘茶・花御堂です。

甘茶は五香水や五色水とも表現されます。また、花御堂は、色とりどりの草花で飾られた釈迦像を安置するお堂です。

灌仏会の別名は花まつりだけではなく、仏生会(ぶっしょうえ)や降誕会(ごうたんえ)、浴仏会(よくぶつえ)、花会式(はなえしき)などバラエティに富み、これらの熟語も季語として活用できます。

まとめ

お釈迦様の誕生を祝う仏教の年中行事の1つである灌仏会(かんぶつえ)は、花まつりとしても親しまれています。

毎年4月8日には、多くの寺院で花御堂に祀った釈迦像に甘茶をかける法要が行われ、参拝者には甘茶がふるまわれることも。

甘茶の乾燥茶葉は市販品として入手もでき、自宅で簡単に作ることが可能ですが、茶葉を入れすぎないのが、美味しく淹れるポイントと言えます。

甘茶以外にも、花まつりの行事食として知られるのは、仏教の教えに沿った旬の食材を活かした精進料理や、春に採れるヨモギを使った草餅や草団子などです。

江戸時代の松尾芭蕉や小林一茶など歴代の俳諧師によって、数多くの俳句を詠まれてきた花まつり。

灌仏会や仏生会、甘茶、花御堂などの季語を用いて、晩春の情景を込めた俳句を創作してみませんか?