2月に入ると立春を迎え、暦の上では早くも春。
新しい季節の無病息災を祈る邪気払いの豆まきで知られる節分は、立春の前日にあたります。
「鬼は外!福は内!」の勇ましい掛け声と共にまく豆は、地域により違いがありますが、大半を占めるのは大豆です。
無味乾燥で何の変哲もない節分の豆ですが、その小粒な外見からは想像がつかない程、体に良い成分がぎっしりと詰まっています。
大豆に含まれる栄養素は、たんぱく質やイソフラボンを始め、体内の脂肪の酸化を防ぐサポニン、レシチン等、実に多様です。
肉や魚と同程度の豊富なたんぱく質で、大豆はしばしば「畑の肉」と形容され、肉の代替である「大豆ミート」の原料になっています。
たんぱく質は、人間の体の基本となる筋肉や臓器を構成する成分で、健やかな体作りには欠かせない重要な栄養素の1つ。大豆の33%がたんぱく質です。
また、大豆と言えば、美容効果のあるイソフラボンの働きも見逃せません。
イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用があり、更年期障害の症状を軽減したり、骨の強化に有用です。
レシチンは、油と水を混ぜ合わせる乳化作用に優れ、血中のコレステロールを低下させるため、生活習慣病である動脈硬化の予防が期待できます。
他にも、大豆には便秘の改善に役立つ食物繊維や、カルシウムにカリウム、マグネシウム等のミネラル分、栄養素をスムーズにエネルギー源に変え、代謝を助けるビタミンB群などもバランス良く含まれているのが特徴です。
バランスの取れた成分を含有し、栄養価の高さが際立つ大豆が、スーパーフードと呼ばれるのも十分に頷けます。
厚生労働省が2015年に実施した「国民健康・栄養調査」によれば、私達は1日平均60.3gの豆類を摂取しているとのこと。
摂取量は年々減少傾向にあり、1日あたり100gの豆類の摂取が推奨されています。
節分の豆でダイエットは可能か?いくら食べても太らない魔法の食材?
もやしやきな粉、豆腐に納豆と、大豆を原料にした食品は数多くあり、低カロリーで健康的というイメージがあります。
これはもしや、節分の豆まき用に入手した大豆がヘルシーフードとして、冬の間に蓄えた脂肪を落とすダイエットにも絶好な食べ物になるのでしょうか?
健康的に減量を目指すなら、摂取カロリーを把握して、食べる量をコントロールする必要があります。
日本豆類協会が作成した栄養成分表を見ると、乾燥大豆のエネルギーは100g当たり422kcal(落花生は562kcal)です。
茶碗に一杯のご飯が240kcal、6枚切りの食パン1枚が160kcal程であるのと比較すると、意外と高いカロリーにガッカリしますが、実際には大豆ひと粒は約0.3gなので、10粒食べたとしても3g・約13kcalでしかありません。
ダイエットに良く食べられるもやし(100gで14kcal)やこんにゃく(100gで5kcal)と比較しても、見劣りしないカロリーレベルです。
もう1つ、カロリーの他にもダイエットで重要な決め手となるのが、糖質の量。糖質は人間が活動する上でのエネルギー源であり必要不可欠な栄養素ですが、代謝を上回る量を摂取すると、脂肪分となって体に蓄積されるのがデメリットです。
炭水化物から食物繊維を除いたものが糖質であり、蒸したり茹でた大豆は水分を含んでカロリーが半減すると共に、100gあたり5g程の糖質しか含みません。
同量のご飯(白米)には36.8gもの糖質が含まれていることを考えると、大豆を多く食べても脂肪が付き難い、つまり、太りにくい利点が一目瞭然です。
節分の大豆がダイエットに適する理由はこれだけに留まらず、食物繊維の豊富さも注目のポイントと言えます。
大豆の食物繊維は、水分を吸収し膨張する性質を持つため、腸の動きに刺激を与え、便秘の解消には最適です。
しかも、噛む回数が増えるので、早食いや食べ過ぎを防ぎ、満腹感が得られやすいというおまけも付きます。
節分の豆は、縁起を担ぐだけではなく、ダイエットの救世主にもなりそうです。
節分の豆は年の数だけ食べる?!多かったり少なかったりしたら・・・
豆まきの後は、福豆の実食タイムですが、落花生ならまだしも、炒った大豆を食べる機会は年に1度の節分くらいで、妙なプレッシャーを感じてしまうことも。
数え年分の福豆を食べて、向こう1年の健康と幸せを祈願するのが目的ですが、年を取るにつれて豆のカウントも大変になり、お腹もすぐに一杯になってしまいます。
それでも、節分の豆を年の数だけ食べないと、何か悪いことが起きてしまうようで、落ち着きません。
福豆が大好きで思いがけず年の数より多く食べてしまった、固すぎて噛めずに年の数途中でギブアップなんて事態もあり得ます。
現実には、福豆を年の数だけ食べないと、禍がもたらされるという言い伝えはない様子なので、厳密に守るべきルールではありませんが、気になるところです。
2018年に通信教育大手のベネッセが行った女性向け自社サイト会員へのアンケートによれば、節分でやることの第一位に豆まき(57.8%)がランクイン。
第二位の恵方巻を食べるに次いで、豆を食べる(53.7%)が第三位の結果で、豆まきをしたらほぼ同等の確立で福豆を食していることが分かります。
しかし「年の数だけ豆を食べてる?」という問いに対して、52.4%と半数以上の人が「好きな数だけ食べる」と回答し、驚きを隠せません。
さらには、年の数だけ食べる(27.8%)に次いで、約2割の人が「全く食べない」とも打ち明けています。
意外と多くの人が、現実的で柔軟な対応をしていることが分かり、安堵感が漂います。
古くから伝わる風習に従わないと、バチが当たりそうと、根拠のない義務感で豆を食べるのではなく、一粒一粒に多幸の祈りを込めて味わうのが良さそうです。
福豆を年の数だけ食べるのに苦労したら、定番の福茶にしたり、おかずやおつまみ、スイーツにアレンジして食べきるのもアリなので、リラックスして楽しく頂きましょう。
まとめ
節分の豆まきに欠かせない大豆は、栄養もたっぷりのスーパーフードです。
たんぱく質やイソフラボンを始めとして、食物繊維やミネラル、ビタミンBなどの成分をバランスよく含み、健康維持に役立つ食品として注目を集めます。
加えて、低カロリーで糖質の少ない大豆は、ダイエットにも最適です。
節分の豆は、年の数だけ食べるのが習わしですが、現代では好みに合わせて自由に微調整するケースも多く、無病息災を祈る気持ちが一番の要なのかもしれません。